糖尿病
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糖尿病は血糖値を下げるインスリンの作用不足によってひき起こされるご病気です。インスリンには、血液中の糖分を、エネルギー源として細胞に取り込む働きがあります。
糖尿病は初期の段階では自覚症状を感じづらく、のちに「のどが渇く」「尿がたくさんでる」「体重が減っていく」といった症状があらわれます。
目の網膜の病気を発症したり、動脈硬化による脳や心臓の病気、腎臓の機能低下など重たい状態へとすすむ場合もあり、きちんとした診断と定期的なフォローアップが必要です。
糖尿病の2大タイプ
classification
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2型糖尿病
生活習慣が原因となる糖尿病と言われており、男性では40歳以上、女性では50歳以上の中高年から増える傾向にあります。
いくつかの遺伝的な要因に加えて、食べすぎ、肥満、運動不足、ストレス、加齢などが原因となり発症すると考えられています。 -
1型糖尿病
インスリンをつくる膵臓の‘‘β細胞’’が破壊されることで血糖値がコントロールできなくなります。
割合は糖尿病全体の10%未満で、思春期に判明することが多い傾向にあり、「インスリンを注射でおぎなう」治療が基本となります。
糖尿病の診断と発症リスク
diagnosis and risk of developing
糖尿病は採血を行い「血糖値」「HbA1c」を測定することや、糖尿病に特徴的な症状があるかどうかで判断されます。
特に採血検査で以下のような結果となる場合は糖尿病と診断されることが多くあります。空腹の状態であったか、食事後の採血であったかなど採血をとった時の状況によっていくつかの基準があり、それらを組み合わせて診断します。
【糖尿病の可能性がある検査結果】
●空腹時血糖値 126mg/dl以上
●随時血糖値* 200mg/dl以上
●経口ブドウ糖負荷試験 2時間後の血糖値 200mg/dl以上
●HbA1c 6.5%以上
(*食事と採血時間との時間関係を考えずに測定した血糖値のこと)
通常の採血検査では診断が難しい場合や、糖尿病の疑いが否定できない場合、将来糖尿病を発症するリスクが高い場合は、「75g経口ブドウ糖負荷試験」を行うことで、より正確に診断することが可能となります。
「75g経口ブドウ糖負荷試験」に関してはページの下部に記載しております。ご参照ください。
「日本糖尿病学会 糖尿病治療ガイド 2024」
「東京都医師会 糖尿病の判定に関する検査値の扱い方について」
上記図はこちらの資料を参考に作成
糖尿病の治療とその選択
therapeutic option
患者様の生活スタイルを考えながら、最適な治療をご提案させていただきます。
まずは生活習慣の改善やお食事の管理が治療の第一歩となります。生活面の見直しでも改善が難しい場合は、内服薬や注射剤の使用も考慮していきます。
現在は薬の治療が進歩し、お薬でコントロールが出来る方がたくさんいらっしゃいます。またお薬を一時的に導入したとしてもお薬の減量が可能となったり、少数ではございますが投薬を必要とせず血糖値を正常範囲に維持できる方もいらっしゃいます。
ご病気と向き合いながら、健康な方と変わらない寿命と日常生活の実現を目指していきましょう。
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薬物療法
多くの治療薬の中から、お一人おひとりに適したものを選択し、血糖値をコントロールしていきます。
日常生活や食事療法見直すことから開始し、それでも血糖血やHbA1c の低下がみられない場合は内服薬や注射剤も考慮する場合がございます。皆様のご意向にも耳を傾けながらより良い治療法を組み立てていきましょう。 -
運動
適度な運動でインスリンが効きやすい体質へ改善されます。ブドウ糖の利用が促進されることで血糖値の安定を目指します。
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食事管理
血糖値の安定のために大切です。膵臓の負担を減らすため、食事量や栄養素のバランスを整えます。
当院では連携を組んでいる総合病院の栄養管理室へご依頼し、より専門的な栄養指導も行って頂くことが可能であります。状況を確認しながら対応を一緒に考えていきましょう。
糖尿病の注射剤
self-injection
多くの方が食事療法や内服薬で対応させていただいておりますが、血糖値を安定させるために注射剤をご利用いただく患者様もいらっしゃいます。
治療期間が長くなり膵臓の機能が低下することで、インスリン分泌が徐々に少なくなっていきます。内服薬のみでは血糖値のコントロールの目標を達成することが難しくなり、インスリン自体を補充する治療が必要となる場合があります。
膵臓の機能が残っている場合は、インスリン分泌をうながす注射剤である「GLP-1受容体作動薬」「持続性GIP/GLP-1受容体作動薬」といったものを考えていきます。これらは血糖値の上昇を防ぐとともに、食欲を抑えたり満腹感を持続させる効果から、個人差はあるものの体重減少作用が認められております。さらに腎臓の保護作用に関しても報告されております。
当院では注射剤の治療が必要な場合は、なぜ必要なのかをご説明いたします。ご意向も確認しながら、ご理解を頂いた上で治療を開始していきます。
病状によっては、大切なお身体のことを優先し、連携している大きな病院と協力しながら対応させていただく場合もございます。ご心配なことがあれば是非お聞きいただければ幸いです。
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インスリン製剤
通常空腹状の時でも、少量のインスリンが膵臓から持続的に分泌されおり「基礎インスリン」といいます。朝の空腹時の血糖値が高い方は、この「基礎インスリン」のように効果が長く持続する製剤が相応しい場合があります。食後に高血糖になりやすい場合は、食事のタイミングに合わせて投与する作用時間の短いものを組み合わせていきます。
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GLP-1受容体作動薬・GIP/GLP1受容体作動薬
これらは週1回の注射のお薬となります。【トルリシティ】【オゼンピック】【マンジャロ】といった名前のお薬がございます。注射するまでに作業が多くない打ちやすい設計となったものもございます。血糖値の状況、食欲の程度、体重の推移などを考慮しながら適切なお薬を選択していきましょう。
インスリン治療中の血糖測定
self monitoring of blood glucose
日頃の血糖値の推移を知るために、指先からごく少量の血液を使い測定器を用いて1日1回から数回程度血糖値をチェックしていただいております。
またリアルタイムの血糖値を確認する方法として「FreeStyleリブレ2」をご利用いただいております。500円玉程度の小さな円盤(センサー)を皮膚に貼り付けることで、皮下組織のグルコース値を持続測定しすることが可能となりました。Bluetoothを用いてセンサーからスマートフォンへデータが転送される仕組みとなっており、空腹時や食後のグルコース値がグラフで確認できることが利点です
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2週間装着される小さなセンサーで、耐水性のため入浴やシャワーが可能
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自動的にグルコース値を測定し、1分ごとにスマートフォンへデータが送信
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現在のグルコース値が表示され、わかりやすい曲線グラフも参考にできます
参考資料
アボットジャパン合同会社
「FreeStyleリブレ2の使用方法」
上記図はこちらの資料から引用させて頂いております
75g経口ブドウ糖負荷試験/75gOGTT
oral glucose tolerance test
75gのブドウ糖を含んだ液体(トレーランG液75g:ソーダ水のようなものです)を飲み、血糖値や血液中のインスリン濃度を測定することで糖尿病や糖尿病予備群であるのかを判断いたします。
【検査の流れ】
①前日の夜から絶食とし、朝に当院へご来院(水をお飲みになるのは可)
②まず空腹時の採血をおこないます
③トレーランG液をお飲み頂きます
④飲んだ後、30分後/1時間後/2時間後と採血をおこないます
この検査結果を解析することで、糖尿病の正確な診断につなげるだけでなく、『血糖値を下げようとする膵臓の機能』や『分泌されたインスリンが効きやすい体質かどうか』を知ることができます。
●インスリン分泌指数:食事をして血糖値が上昇していく際の、膵臓の対応の早さ
●HOMA-β:インスリンを少量分泌し続ける膵臓の能力(1日をとおして血糖値を微調整し安定させる)
●HOMA-IR:膵臓からだされたインスリンが、効果をはっきしやすい体質かどうか
これらの数値を知ることで、適切な治療や投薬内容の選択、そしてどのような生活習慣が望ましいのか、治療方針を組み立てる大切な情報となります。当院では患者様お一人おひとりの検査結果や生活状況をしっかりと把握して、治療方針を考えていきます。
参考文献
「日本糖尿病学会 糖尿病治療ガイド 2024」